Fleur Pellerin


さて、lundi matin (月曜の朝) は l’éclipse (日食)で日本全国大騒ぎだった訳ですが、フランスでは «le pays du matin calme»(静かな朝の国) というと la Corée (韓国) のことを表します。「朝鮮」を19世紀の宣教師達がそのように名づけたようですが、どちらかと言うと「鮮」を表す形容詞は frais ですね。ちなみに日本のことは le pays du soleil levant (日の出ずる国) と言い、言葉の繰り返しを避けるため、ニュースなどでは la Corée, le Japonと国名を使う替わりによく使用されます。

さて、その le pays du matin calme が今フランスで大きな注目を集めています。先日の la présidentielle (大統領選挙) で le nouveau Président (新大統領) に選ばれた François Hollande 氏と、le Premier ministre (首相) に任命された Jean-Marc Ayrault 氏の元で、16日に新内閣が発足しましたが、「女性を半数に」という la promesse électorale (公約) 通り、閣僚34名のちょうど la moitié (半分) 、17名の les femmes ministres (女性大臣) が誕生しました。

その中でも特に話題を呼んでいるのが、ministre déléguée chargée des PME et de l'économie numérique (生産再建大臣付中小企業・イノベーション・デジタル経済担当大臣) に就任した Fleur Pellerin 氏。彼女は1973年、le pays du Matin calme, Séoul に生まれ、生後6ヶ月で路上に abandonnée (捨てられて) いたのを un orphelinat (孤児院) に引き取られ、その後すぐにフランス人夫婦の養子になったとのこと。

かなり優秀だったようで、le baccalauréat (バカロレア ; 大学入学資格試験) を普通の人より2年も早く取り、その後はESSEC(エセック経済商科大学院大学)、Sciences-Po(パリ政治学院)、ENA(国立行政学院)という、フランスの haut fonctionnaire (高級官僚), homme/femme politique (政治家) における典型的なエリートコースを歩んでいる彼女ですが、雑誌 le Point の中の記事に彼女のこんなコメントを見つけました。 "Être adoptée a été à la fois un handicap et l'un des moteurs de ma réussite" (養子だということは、障害でもあり、また私の成功の原動力の1つでもありました)。 

道端で息絶えていたかもしれない1人の赤ちゃんが、異国で大切に育てられ、その国を動かす仕事にまで辿り着いたなんて、現代の un conte de fée (おとぎ話) のようです。 フランスでは l’adoption (養子縁組) は決して稀ではなく、白人の夫婦が  la peau (肌) や les yeux (目) の色の違う子ども達をきょうだいとして育てている、ということも自然に行われています。 自分とは la race (人種), la religion (宗教), la culture (文化) の異なる人を、どんな風に見て、どんな風に接するか。それが人や la société (社会) の la tolérance (寛容さ) の指標とも言えると思います。フランスはハンガリー移民の息子 (=Nicolas Sarkozy) を le Président に選んだことのある国でもありますし、今回の le gouvernement (政府) は特に la diversité (多様性) に力を入れた人選になっている様子で、日本では考えられないほど国際的で寛容な国です。

しかし、生後6ヶ月で海を渡ってからは一度も la Corée (韓国) には行っておらず、le coréen (韓国語) も話さない、自身は la Corée とのつながりを意識したことはなく、une Française だと思っている、という彼女の入閣を、何よりも « la première ministre française d'origine sud-coréenne » (初の韓国系大臣) だとか、« un modèle d'intégration » (同化のモデル) などとして取り上げられること自体が、実は根深い la discrimination (差別) のような気がするのは私だけではないと思います。彼女自身も、キャリアや能力をまず評価して欲しいと願っているはずでしょうし、d'origine asiatique (アジア系) だから入閣できた、などという誹謗中傷に悔しい思いをしているかもしれません。

私の好きな歌、 The Blue Hearts の「青空」に「生まれた所や 皮膚や目の色で いったいこの僕の 何が分かるというのだろう」というフレーズがあります。le handicap をバネに、努力して着々と成功の階段を上っている彼女に、まずは心からはエールを送りたいと思います。そして、我が息子達が生きていくこれからの社会が、国境や人種、言葉の壁を越えて人々が協力し合い、共存する平和な世界になって欲しいと、1人の母親として心から願います。
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